ベラトール135/BELLATOR135
2015年3月27日@アメリカ・オクラホマ州タッカービルウィンスターワールドカジノ&リゾートレッスルマニア31/WRESTLEMANIA31
2015年3月29日@アメリカ・カリフォルニア州サンタ・クララリーバイス・スタジアムメジャーリーグベースボールの舞台に野茂英雄が立ってから20年、アメリカのスポーツ界に日本から新たな“HIDEO”がやってきた。スポーツエンターテインメント/プロレスの揺るぎなき王者『WWE』とメディア大企業ヴァイアコムによる全米NO.2規模のMMA『ベラトール/BELLATOR MMA』に時を同じくして2人の“HIDEO”がそれぞれのパフォーマンスでジャパニーズセンセーションを巻き起こした。イタミ・ヒデオと所英男。この2人に日本のファイト・スポーツファンの夢と希望が託されている。昨年2014年7月にそれぞれのアナウンスがなされていた。
WWEジャパン大会にKENTAが登場。レジェンドスーパースター、ハルク・ホーガンに招き入れられて公開調印を締結するという破格の演出に期待の高さがうかがえた。スコット・コーカー新体制のベラトールは所英男との契約を正式発表。連勝実績が重要視されると思われていたアメリカトップMMAプロモーションが所の試合内容を選んだ。プロレスとMMAの日本を代表する人気選手が同時期にアメリカ行きを発表した奇遇がその後必然に変わっていく。
2ヶ月後の2014年9月、遂にWWEのテレビショー『NXT』に登場したKENTAは自らリングネームを発表した。“イタミ・ヒデオ/HIDEO ITAMI”これは一体どういう意味なのか。発表直後から様々な憶測がネット上を駆け巡った。最も多かったのが、本文冒頭に引用した野茂英雄=アメリカで活躍したスター選手から名を拝借した、という意見。世界的に著名な映画監督・伊丹十三から姓を取ったとも言われていた。本人いわく、“HERO OF PAIN=痛みの英雄”でイタミ・ヒデオ。KENTAのセンスは一枚上手だった。ここで私は気が付いていた。WWEとMMA、日本から“HIDEO”がアメリカに揃い踏みするのか、と。この視点で一筆する機会をうかがっていたが、突然、絶好の時が来た。まず所英男の全米MMAデビューは今年2015年に入って3月上旬に正式発表された。現地時間3月27日のフライデーナイト、オクラホマで開催される『BELLATOR135』。当初、所のカードは前座ラインナップに組み込まれていたもののメインカードのキャンセルによりテレビ中継枠に繰り上げ。さらに大会ポスターに名前が入るセミファイナルに格上げされる幸運が重なった。このニュースに続く形で突如吉報が届いた。所戦の前日、26日にカリフォルニア州サンノゼから“イタミ・ヒデオが『レッスルマニア31』の出場権獲得”と。同じく日本からWWEに移籍しNXTで競い合う元PACことエイドリアン・ネビルと元プリンス・デヴィッドことフィン・ベイラーをファンイベント内ワンデイトーナメントで連破したイタミ・ヒデオは会場内に吊るされた“WRESTLEMANIA31”の巨大ロゴに大見得を切ってみせた。バトルロイヤルといえども、年間最大、世界最大のスポーツエンターテインメント/プロレスの祭典にWWEデビュー半年で出場できることになった。かくして、3月下旬にアメリカで2人の“HIDEO”が連続して大舞台に立つことになった。日本で開花した桜は2人を祝しているかのようだ。ベラトールの所英男出場に合わせてWWEがイタミ・ヒデオを選出したのだとしたらそれもまたWWEらしい相乗プロモーション狙いだが、ここは純粋に日本を代表する“HIDEO”たちを応援するべきだ。そして2人はやってのけた。まず27日の所英男。日本参戦経験あるLC・デイビス相手に5分3ラウンド、まったく中だるみなく目の離せないスリリングなファイトを見せてくれた。ジャンピングキックの奇襲、バックブローにハイキック、素早い仕掛けのサブミッション。かつて日本の地上波テレビで光り輝いていた赤い閃光が舞台を新たにバージョンアップしたように映った。
2-1判定負けの結果も、試合中何度も驚きの歓声を呼び、試合終了時にはスタンディングオベーションでオーディエンスを満足させた。実況アナウンサーはこう叫んだ。“ファンタスティック・ファイト!”前日計量で所本人がアピールした“トコロ・スタイル”は勝敗とは別次元の価値としてMMAファンに受け入れられた。そして29日の日曜日、7万人の大観衆で埋まるレッスルマニアに出場する唯一の日本人となったイタミ・ヒデオ。アンドレ・ザ・ジャイアント杯バトルロイヤルで大巨人の後継ビッグショー相手にリング中央で相対するシーンが訪れた。沸き上がる“ヒデオ”コール。わずかな時間ながらも豪快なやられっぷりを見せた。前日にはWWEで初めてオリジナルGTSを披露したイタミ。言い換えればGTSの使用許可を得た。かつて大スターCMパンクがフィニッシュにしていた技を正式に取り戻したことでイタミ・ヒデオがWWEスーパースターとして『RAW』や『SMACKDOWN』で活躍する姿が早く見たい。レッスルマニアはそのための大きな一歩だと信じたい。
2人の“HIDEO”の記念すべき全米デビュー戦が日本ではテレビでライブ視聴できなかった。日本のメディア事情は変化した。プロレス/格闘技はテレビからインターネットへ。この流れには従うしかない。アメリカもその他世界も今やネットでライブは当たり前。だからこそ日本でのネット視聴はもっと事前に周知されるべきだ。今後の日本国内での対応に期待するべきなのか、海外サービスに直接アクセスするべきなのか、各自判断しよう。所英男とイタミ・ヒデオ、2人の“HIDEO”の挑戦はまだ始まったばかり。ファイト・スポーツ界でジャパン=HIDEOと浸透する日も遠くないかもしれない。それだけこの2人にはそれぞれの華がある。ロンダ・ラウジーがレッスルマニアのリングに立ったように、いつかイタミ・ヒデオのセコンドとして所英男が登場したり、その逆もしかり、そんな“チームHIDEO”が見たい。それが実現するときはこの2人が名実ともにファイト・スポーツの日本代表となったときだ。その日を夢見て“HIDEO”を応援しよう。
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